消臭効果と抗菌効果
刺身やそばの薬味として使われることが多いわさび。ツンと突き抜ける辛味は、料理の旨味を際立たせるが、飛鳥時代には、薬草として利用されていたとも言われ、日本人は経験からわさびの力を学んでいた。魚の生臭さを消す消臭効果や細菌の増殖を抑える抗菌効果なども古くから知られ、19世紀以降は、にぎり鮨をはじめ、日本料理に欠かせない食材となっている。近年は、科学的な研究が進み、わさびに含まれる成分がガンの抑制作用や花粉症の軽減効果などの機能性を持つことも分かってきた。
様々な試験研究機関にてわさびの研究がなされているが、長年にわたり産学連携でわさびの研究を実施してきた金印株式会社(名古屋市)に機能性に関する情報協力をいただいた。
刺身やそばの薬味として使われることが多いわさび。ツンと突き抜ける辛味は、料理の旨味を際立たせるが、飛鳥時代には、薬草として利用されていたとも言われ、日本人は経験からわさびの力を学んでいた。魚の生臭さを消す消臭効果や細菌の増殖を抑える抗菌効果なども古くから知られ、19世紀以降は、にぎり鮨をはじめ、日本料理に欠かせない食材となっている。近年は、科学的な研究が進み、わさびに含まれる成分がガンの抑制作用や花粉症の軽減効果などの機能性を持つことも分かってきた。
わさびの機能性において中心的な役割を果たすのは、「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート」(6-MSITC)という成分だ。からし油の一種として、解毒作用、抗酸化作用、血流改善作用、がん細胞転移抑制作用などの力を持つことが近年の研究で解明されている。
なお、6-MSITCは、生わさびをすりおろした状態で得られる成分であり、チューブ入りわさびには、ほとんど含まれない。
わさびは、解毒代謝酵素の1つ、グルタチン-S-トランスフェラーゼ(GST)の活性を上昇させる作用が、野菜の中で最も強い。金印わさび機能性研究所と名古屋大学の大澤俊彦教授らとの共同研究によれば、わさびのGST活性力は、芽キャベツの約5倍、大根の約2.5倍。その作用の中心成分が6-MSITCであることも近年の研究で解明されている。
※画像提供:金印株式会社 ※転載不可
抗酸化作用とは、ストレスや高血糖などによって、体内に過剰発生する活性酸素を抑える力を指す。金印わさび機能性研究所と大阪市立大学の共同研究によれば、マウス血液の活性酸素産生抑制作用は、6-MSITCによって48%抑制したという試験結果が出ている。また、ヒトが本わさびのエキスを3カ月間摂取したところ、遺伝子のダメージを示す指標(8-OHdG量)が、エキス摂取前と比べて44%抑制されたという実験結果も同研究所によって明らかにされている。
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わさびには、発がんを抑制する作用と転移を抑制する作用があることも分かっている。マウスの足にがん細胞を植え付け、2週間後に肺へ転移した数を調べたところ、エサに6-MSITCを混ぜたマウスの転移がん数は大幅に減少し、76%の改善が見られた。(日本癌学会 第62回総会にて発表)
わさび根茎に含まれる6-MSITCとわさび葉に含まれるイソサポナリンというフラボノイドの一種に、毛乳頭細胞を活性化する作用が報告されている。細胞試験では、市販の育毛剤の有効成分と比較しても強い効果が認められた。メカニズムとしては、毛乳頭細胞のアデノシンレセプターを増やすことが分かっており、育毛効果も期待できる。
わさび根茎の抽出物であるワサビスルフィニル®(有効成分6-MSITC)を、運動習慣のない45歳から68歳の方37名(試験品19名、プラセボ18名)を対象に、100㎎、2ヵ月間摂取させたところ、判断能力や情報処理速度に関する認知機能が向上することがわかった。わさびの摂取により、頭の回転が速くなり、処理能力や正確性が向上する可能性がある。
6-MSITCには、糖尿病合併症予防作用、花粉症軽減効果、膝関節痛抑制作用があることも近年の研究で分かっている。中でも、女性にとって嬉しいのは美肌効果だろう。平均年齢52.6歳の女性18人を対象に、わさび根茎の抽出物であるワサビスルフィニル®(有効成分6-MSITC)を、毎日200mg、12週間摂取させたところ、顔の明るさやシミ・ソバカスにおいて改善効果が見られたという。この作用は、皮膚のたるみ、シワの防止、色素沈着抑制、抗紫外線効果、白髪防止を目的とした化粧品や皮膚用外用剤などにも応用されている。
料理の旨味を引き出すわさびは、私たちの健康維持に有効な機能性を数多く有している。わさび田が日本の自然環境を守ってきたように、わさび自体もその機能性によって、私たちの健やかな暮らしを支えきたと言っても過言ではないだろう。
わさびのカラシ油(イソチオシアネート)は、産業や医療分野にも多用されている。抗菌シート、防カビ剤、防ダニ剤、食品の鮮度保持剤、消臭スプレー、洗浄剤、抗歯周病剤、口腔ケア剤、貝や海洋生物の付着防止剤(船舶の船底やコンクリートに使用)、イネ用の消毒剤など、利用範囲は多岐にわたる。その他にも、わさびの機能性を活かした化粧品や健康食品なども開発され、わさびの機能性は、ヒトの暮らし全般に大きく関わるとともに、生活の質をも高めている。
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