日本のわさび栽培発祥の地と言われる静岡市葵区有東木。その一画で、生わさびやわさび漬けなどの地場産品の販売と食事の提供をする店舗が「うつろぎ」だ。地元の女性約20人が運営に携わり、店内にはいつも明るい笑顔があふれている。人気商品は、有東木産のわさびをふんだんに使った「うつろぎ定食」1,050円。わさびの葉の天ぷら、わさびの茎の和え物、わさび漬け、わさびのり、手打ちそばなど、大自然の恵みを周囲の景観とともに味わえば、「来てよかった」という思いがひしひしと湧いてくる。

有東木産わさびのシャープな辛味を味わうなら「さびめし」600円がオススメだ。ごはんの上にカツオ節とすりおろしたわさびを乗せ、醤油をかけまわすだけのシンプルな料理だが、それゆえに有東木産わさびの風味がストレートに味わえる。ただし、他産地のわさびに比べて辛味が強いため、最初はわさびの量を加減した方が無難だ。さびめしに手打ちそば、天ぷら、和え物などが付いた「さびめし定食」1,300円も人気がある。

うつろぎの魅力を語る上で欠かせないのは、店を切り盛りする女性たちの人柄だ。同店の代表・望月友代さんが「こんなに山奥まで来てくれたんだから、精一杯の気持ちでお迎えしなくちゃ」と語るように、同店には真の心の触れ合いがある。「何もないところだけど、空気と水はきれいでしょ」といった何気ない会話に心が和み、ふと気づけば、心身が洗われたような感覚に包まれる。「リピーターになってくれる人も多いのよ」と笑顔で語る望月さんの言葉にも至極納得だ。

店内には、清流を眺めながら飲食できるテラス席があるほか、寒さや雨をしのげるテーブル席もある。わさび漬け、わさびのり、わさび味噌、ほう葉餅など、すべて手作りの土産物も豊富で、「わさび漬けづくり体験」「そば打ち体験」などの体験メニューもある（ともに4日前までに要予約）。望月さんは「何もないところだけど」と謙遜するが、この店には“ここにしかない”清らかな自然と優しい時間が満ちあふれている。